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2013年04月01日

稀代の宰相の空白の若手時代を魅力的に描く!『管仲/宮城谷昌光』

書名 管仲
著者 宮城谷昌光
出版社 文春文庫
発売日 2003-04-01
感想一言 歴史の空白を埋める小説家の想像力の、無限大さをみよ!

たとえ管仲を知らずとも、「衣食住足りて礼節を知る」ということわざは聞いたことがあると思う。

そう、この言葉を残した人こそ、中国の紀元前700年ごろ、春秋戦国時代に活躍し、中華にはじめて覇者を誕生させた天才宰相(宰相(=さいしょう)はいまの日本でいう内閣総理大臣にあたるもの)である、管仲(管子、管夷吾、仲父とも)である。

 

本来、管仲が残した言葉は、

『倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る』

である。

 

倉廩は倉庫のことであるから、食べ物に困らない状況を指しているのだろう。

人間は安定した生活を手に入れることで、自然と道徳を身につけ、誇りと恥を持つようになるというもの。逆に、衣食が満ち無ければ、道徳心を植え付けようとしても無理だろう、という逆説でもある。

正直、私自身も毎日白ご飯と塩だけ、という生活をしてたほどの極貧の時期があり、その頃はモラルなんて糞もなかった。生きることこそ最優先であった。万引きしてまで食いつなげず、というところまで行かなかったものの、何度も頭によぎるほどで、身を持って体験しているからこそ、この言葉は私にはズンと重い。

 

管仲のこれは、覇者となって天下に号令するのであれば、領土を増やすこと、軍隊を強くするといった強兵政策よりも、まずは国を富ませる、つまりは富国政策こそ重要だと説いたものであった。民の生活基盤がしっかりしてこそ、兵にも鋭気が満ちるのである。春秋時代当時は専業軍人がおらず、兵士は日常では農民であった。

管仲といえば、有名な説話がもうひとつある。

 

管鮑の交わりである。

 

管仲と鮑叔、二人のあまりに強固な友としてのつながりを描いたもので、親友を指す。詳しくはwikipediaの管仲の項を見るといい。

 

管仲はこれほど魅力的で説話もあり、司馬遷の史記においても第二の位置に置かれるほど有名かつ重要な人物であったにもかかわらず、小説作品は少ない。

ここに差し込んだのが、中国春秋戦国時代を題材に筆をとる名作家、宮城谷昌光氏である。

管仲は、その強烈すぎるエピソードが光を放ちすぎるがゆえに、いかにして管仲と鮑叔が若い間に出会って、友好を深めたのか、なぜ一時期商人をやっていたのか、など、宰相となる直前と、その以後のエピソードにつながる、管仲の若いころ・過去の資料が圧倒的に少ない。

 

誰もが見たかったようで、見たくなかった管仲の青年時代。鮑叔との出会い。

それを宮城谷昌光氏は、鳥肌が立つほど魅力的に書ききってくれた。家の不幸に巻き込まれ、愛する人と引き裂かれ、苦悩の中の苦悩に陥るその姿。

 

「だから管仲の政治はこうだったんだ。」

 

と思わず膝を打ってしまう。どれも宮城谷氏の想像から生まれたものなのに、管仲を作り上げ、我々の管仲へとつなげてくれた。鮑叔とつなげてくれたのだ

 

正直、この文章は本の紹介でもなんでもないと思う。

ただ、管仲という人物に少しでも興味をもったなら、最初に手にとる本はこの宮城谷昌光著、管仲しかない。これでしかありえない、と言い切りたい。そして、管仲を知りながら宮城谷昌光さんの管仲を見ていないものは、その空白を埋める作家の素晴らしい想像力に、唸らされてみるのがいいだろう。

 

2003年の発売当時から、大ベストセラーと各新聞がこぞって書評を書いた本作、見逃さずにいられない!

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