1. おすすめ小説.com-名作に感動せよ!-
  2. 文学
  3. ハラハラしてドキドキして感動する『まほろ駅前多田便利軒/三浦しをん』

2013年04月17日

ハラハラしてドキドキして感動する『まほろ駅前多田便利軒/三浦しをん』

書名 まほろ駅前多田便利軒
著者 三浦しをん
出版社 文春文庫
発売日 2009-01-09
感想一言 後悔してもしきれない、そんな過去は修復できるのかそうでないのか。

ここは東京都まほろ市。神奈川と東京の堺にある町。

ちょっぴり過去に起こした苦い思い出をひきづって、庭の掃除から塾帰りの子供の送り迎えのかわり、恋人代行から女子高生の身辺警護まで20分2000円で請け負う便利屋なる職業をいとなむ主人公「多田」。

突然まほろ市のバス停に姿をあらわした、主人公と同級生だった中学時代から奇人変人で有名だった「行天」が、便利屋に居候をはじめるところからお話は始まる。

 

掴みどころがなくマイペース、人の気持ちを考えてるのか考えてないのか、優しいのか冷酷なのか、とにかくよくわからない「行天」の行動と言動に振り回されながら、町の問題を解決してゆく。

 

掃除の手伝いや壊れた戸の修理など、なにげない便利屋仕事の間にとびこんでくる、夜逃げする家族、クスリ売りの手伝いをする小学生、親殺しの有人を匿う女子高生など、非日常で殺伐とした事件もえがきながらも、文体は終始優しく、作品全体にゆったりとした雰囲気を醸し出している、日常系小説とでもいえるもの。

その中に、便利屋という特殊なポジションによって、探偵もののようなスリルとサスペンスが少しばかり味付けされて、ユニークさを演出している。

風景の描写に、ひっそりと登場人物の名前の漢字を仕込んでみたりと、ニヤリとさせてくれる仕掛けまで用意されている。

直木賞受賞作品。

 

しかし、きちんと読むとみえてくる、作品全体の「核」として流れるテーマは「親と子供」。そして「修復」。

どこがどう親と子供なのかは、おもいっきりネタバレになってしまう範囲を含むので、紹介するのは控えておきます。

テーマとかかわって、魅力を発揮するのが主人公の二人。完全に対照の背景をもっているところがポイント。

二人の主人公の、対照な背景に対する捉え方と、その過程に対する「修復」の想いをくみとったとき、この小説は化けるのだ。

 

もし私が「この小説から一文だけ引用したいなら」と聞かれたら、次のセリフをあげるだろう

 

「はるのおかげで、私たちははじめて知ることができました。愛情というのは与えるのではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと。」

 

きっと、いくつかの恋愛と別れを繰り返して、大人になったら知ること。

「愛されるよりも愛したいと思う相手がいることの幸せ。」

それをこの小説の最高のタイミングで、美しいセリフで表現してくれたことに、私は感謝をしたい。

 

comments powered by Disqus